住宅ローン審査をパスするための事前準備

前のページでは住宅ローンの審査に落ちた場合の対応について説明しました。

逆に考えれば、その対応を住宅ローン申込の前に行っておけば、住宅ローンの審査にパスする可能性はグッと高まります。

このページでは住宅ローン審査をパスするための事前準備について説明します。

大企業の社員や公務員で年収が高く、健康状態に問題なく、ローンなどの借金も一切なく、口座振替などの支払いに遅延や延滞など全くないという方はまず問題なく住宅ローンの審査は通ります。

この事前準備は住宅ローンの審査に何がしか不安のある方に向けて説明するものです。

備えあれば憂いなし。

自分の収入や信用状況に不安があれば、住宅ローンの審査をパスするための事前準備をしっかり行って住宅ローンの申し込みをしましょう。

 

 

クレジットカードを整理する

住宅ローン審査の意外な落とし穴がクレジットカードのキャッシング枠です。

クレジットカードはショッピング等の支払いだけでなく、ATMにクレジットカードを入れるだけである一定枠まで簡単にお金借りることができるキャッシング機能があります。

いつでもお金が借りられるわけですから、借りていなくてもこの枠が既に借りているものだとみなされてしまうことがあるんです。

つまり、キャッシング枠のついたクレジットカードをたくさん持っていると、キャッシング枠を使っていなくてもお金を借りていると見なされ、これが理由で住宅ローンの審査に通らないという場合があります。

ですから住宅ローンを申し込む前に、使っていないクレジットカードは解約し、使っているものに関しては、使わないキャッシング枠があるのであれば、この枠もはずしてしまうとよいと思います。

キャッシング枠のはずし方は簡単で、クレジットカードの裏に書いてある電話番号に電話をし、キャッシング枠を外したいと伝えるだけで大丈夫です。

 

クレジットカードについては複数枚保有している方が多いですね。

私も付き合いなんかで10枚くらい持っています。

しかし、実際利用しているのはその内の2枚程度です。

保有しているクレジットカード全てに30万円程度のキャッシング枠があります。

キャッシングを利用したことはありませんが、私は10枚のクレジットカードを保有していることで借金などないにもかかわらず、300万円の借金があると見なされるのです。(キャッシング枠30万円×10枚=300万円)

実に恐ろしい話です。

このように住宅ローンの審査においてはクレジットカードのキャッシング枠も借入額と見なされますので、クレジットカードをたくさん持てば持つほど、住宅ローンの審査にマイナスになります。

クレジットカード自体を持たないのがベストですが、必要であれば最低限の保有にしましょう。

もしクレジットカードのキャッシングを利用しているのであれば、住宅ローンを申し込む前に返済する方がいいと思います。

クレジットカードのキャッシングは金利が高く、それを利用していること自体が審査のマイナスになります。

 

カードローンを整理する

カードローンは、クレジットカードのようにショッピング機能はありませんが、あらかじめ決まった金額(極度額といいます)までなら、カード1枚でその金額までATMで何度も自由にお金が借りられる商品です。

銀行系や信販系の商品があります。

金利はクレジットカードのキャッシングほど高くなく、私も若いころは自分の銀行のカードローンをよく使っていました。

また、カードローンのキャンペーンがあれば、お客さんに頼み込んでカードローンを作成してもらったりしました。

このカードローンもクレジットカード同様、いつでもお金が借りられるわけですから、借りていなくてもこの枠が既に借りているものだとみなされてしまうことがあるんです。

皆さんもお付き合いのある銀行で頼まれてカードローンを作っていませんか?

カードローンはクレジットカードのキャッシング枠よりお金の借りられる極度額の大きい商品が多いんです。

私が使っていた自分の銀行のカードローンの極度額は300万円でした。

このほかにも付き合いのある他の銀行の知人から頼まれて作ったカードローンが2件あり、それぞれ100万円の極度額でしたので、合計500万円の極度額のカードローンを保有していました。

カードローンを利用していなくても500万円の借金があると見なされるんです。

上述のクレジットカードのキャッシング枠300万円と合わせれば、私は借金がないにもかかわらず800万円の借金があると見なされるんです。

これだけで住宅ローンの審査には充分マイナス要因です。

お付き合いで作った使用していないカードローンがあれば、即刻解約しましょう。

もしカードローンを利用しているのであれば、必要最低限までお金の借りられる極度額を減額しましょう。

お金の借りられる極度額の変更は増額する場合は再度審査がありますが、減額する分には簡単に手続きができます。

 

個人信用情報を確認する

この個人信用情報で住宅ローンの審査に落ちる方が実に多いんです。

個人信用情報とは過去に借り入れがあった場合はその実績、またクレジットカードやローンの支払い遅延、延滞など過去の金融取引について問題があった場合に記載される情報です。

「自分は大丈夫」と思っていても、実は本人が気づいていないミスがあったりするんです。

いくつかの例をあげてみましょう。

 

携帯電話料金の未納

最近多いパターンです。

人気のiPhoneなどの携帯電話機種を購入する場合、代金を分割支払いにして購入する方も多いと思います。

請求は通話料と一緒に来ることになりますが、この携帯電話機種の代金部分はローンなんです。

その支払いを口座振替にしていた場合、その請求の引落日に引落口座に充分なお金が入っていなかったために引き落としができず、しばらくほったらかしにしてしまったといった例などです。

このケースはローンの延滞と見なされ、個人信用情報上アウトです。

クレジットカード払いにしておくというのも1つの方法ですが、クレジットカードの請求代金引落日に引落口座が残高不足で引き落としができないとこちらはクレジットカードの延滞となり、これまた個人信用情報上アウトです。

クレジットカードの延滞

上記で携帯電話代金のクレジットカード払いのケースを書きましたが、クレジットカードはそのほか様々な支払いに利用されます。

ショッピングに限らず飲食店での代金、公共料金、スポーツジム等の会費、習い事の月謝などもクレジットカードで払えたりします。

特にネットショッピングの増加に伴い、クレジットカードの利用は増えています。

クレジットカードの代金は金融機関の口座から引き落とされますが、その請求の引落日に引落口座に充分なお金が入っていなかったために引き落としができないと、クレジット代金の延滞となり個人信用情報上アウトです。

 

以上のように自分が認識していないミスがあるケースは少なくありません。

個人信用情報に何も問題がなければいいのですが、思わぬミスが記載されていたら大変です。

そんなことがあれば対応を考えなければならないんです。

住宅ローンを申し込む前に自分の個人信用情報を確認する方法があります。

国内には日本信用情報機構(JICC)、シー・アイ・シー(CIC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC)という個人信用情報センターが3つあります。

この3つの個人信用情報センターに自分の個人信用情報を請求すれば、自分の過去の履歴をチェックすることができます。

3つの個人信用情報センターはそれぞれ取り扱う個人信用情報が異なります。

ですから、3つの個人信用情報センターすべてから個人信用情報を取り寄せたほうが間違いないでしょう。

個人信用情報センターが取り扱う個人信用情報は次の通りです。

国内の個人信用情報センター

日本信用情報機構
(JICC)
消費者金融会社の約80%が加盟
顧客情報/契約内容/返済状況/取引事実情報/申込み情報等が申請・登録されます
日本信用情報機構のホームページ
シー・アイ・シー
(CIC)
信販会社、百貨店、クレジット会社、リース会社、保険会社、保証会社、銀行、消費者金融会社、携帯電話会社などが加盟
顧客情報/契約内容/返済状況/取引事実情報/照会利用情報等が申請・登録されます
シー・アイ・シーのホームページ
全国銀行個人信用情報センター
(KSC)
金融機関(銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合、政府関係金融機関など)、銀行系クレジットカード会社、消費者金融専業者、保証会社等が加盟
取引情報/照会記録情報/不渡情報/官報情報/本人申告情報などが申請・登録されます
全国銀行個人信用情報センターのホームページ

個人信用情報の請求方法は各個人信用情報センターのホームページをご確認ください。(上の表に各個人信用情報センターのホームページをリンクしていますのでクリックすればホームページにアクセスします)

手数料は各社1,000円前後で高くはありません。

こうやって調べると、自分が気づかなかった問題が出てくるんです。

自分では何も問題がないと思っていたけれども、よく思い出してみると「携帯電話の支払いを遅延したことがある」、「レンタルDVDの返却を忘れていたことがある」なんて細かいミスをしていたなんてこともあるんです。

 

個人信用情報に問題がなかったら

これはかなり前進です。

上述のクレジットカードやカードローンを整理して、次に説明する借入額や返済期間を充分検討して万全の態勢で住宅ローンを申し込みましょう。

かなりの確率で住宅ローンの審査をパスできるはずです。

 

個人信用情報に問題が見つかったら

これが問題です。

その個人信用情報に記載されているミスの程度によって対応が違います。

ミスが軽微な場合

このケースでしたら何とかなるかもしれません。

ミスが軽微な場合とは過去のミスが故意ではなく、その回数が少なかったり、きちんとその理由が説明できるケースです。

この場合は過去のミスを説明することで、住宅ローン審査をパスする可能性があります。

例えば、携帯電話料金の支払いが遅延していたことが判明した場合、たまたま引落口座に入金する前にけがや病気で入院したのであれば、当然入金はできませんし、正当にに説明できるあります。

しかし、本審査を行う信用保証会社はそんなことは知りません。

このように本審査を行う会社がわからない、正当な理由でミスをしていたのならその事情を前もって説明しておけば審査の心証は随分違います。

このように説明のつく軽微なミスで事前に説明できていれば住宅ローンの審査に通る可能性は充分あります。

住宅ローンを申し込んだ金融機関の窓口において口頭で説明しても構いませんが(おそらく担当者がその事情を補足説明として作成してくれるはずです)、自分自身で文書を作成して渡すことができれば、さらに心証がよくなると思います。

ミスが軽微でない場合

このケースでしたら住宅ローンの審査に通らない可能性が高いです。

ミスが軽微でない場合とは過去のミスが本人に起因するもので、その回数が多く、理由が説明できないケースです。

例えば、消費者金融への返済が何度か遅延したとか、クレジットカードの返済が何回か遅れたなどです。

このような事実が個人信用情報に記載されていたら、「この人は信用のない人だ」と判断され、住宅ローンの審査に通ることは難しいでしょう。

大企業に勤務し、年収が高額であっても、過去にクレジットカードの延滞などを繰り返していると、その人は住宅ローンの審査に通りません。

年収などの返済能力も大切ですが、その人がきちんと毎月返済してくれるかといった信用力も住宅ローンの審査には重要なんです。

では、ミスが軽微でなかった場合はどうすればいいのでしょうか?

この場合はしばらく時間を待つしかないんです。

ミスを犯して一度個人信用情報に記載されると、ミスの度合いにもよりますがその情報が更新されるまでに5年から10年ほどかかります。

一般的には5年で消えるケースが多いようです。

仮に3年前になにか履歴に残るミスをしてしまった場合、あと2年でその履歴は消えるということです。

ですから、2年後以降にあらためて住宅ローンの申し込みをすれば、個人信用情報の履歴は消えています。

大切なことは、これから新たなミスを犯さないことです。

そんなことをしてしまえば、そこからさらに5年間、個人信用情報に新しい履歴が残ってしまいます。

同じ過ちを決して繰り返さないように工夫することが大切です。

ただ、信用保証会社の審査基準は各社まちまちです。

個人信用情報に軽微でないミスがあったとしても、住宅ローンの審査が通る可能性がないわけではありません。

ダメを承知で申し込んでみても構わないと思います。

審査にパスすれば儲けもの、もしダメな場合は個人信用情報上の問題と捉え、履歴が消えるタイミングを待ちましょう。

 

住宅ローンの申し込み内容を充分検討する

クレジットカードやカードローンを整理し、身辺がきれいになって、個人信用情報に問題がなければ、いよいよ住宅ローンの申し込みです。

あとは住宅ローンの申込額、返済期間がが妥当であれば審査はまず問題なくパスできるでしょう。

クレジットカードのキャッシングやカードローンなどの借金がなく、個人信用情報に問題がなくても、返済に無理のある申し込み内容でしたら、通る審査も通りません。

ですから、返済に無理のない申し込み内容にし、住宅ローンの審査をパスできるようにしましょう。

 

頭金を準備する

頭金を用意していると審査の印象がグッとよくなります。

その金額は多ければ多いほどいいんですが、現実的には難しいところもあるので、今後の生活に無理のない範囲で構いません。

住宅購入の頭金は一般的に2割が妥当とされています。

ですから、住宅購入資金の2割以上の頭金が用意できれば住宅ローンの審査上、何の問題もありません。

ということは、購入物件の価格が3,000万円なら600万円、4,000万円なら800万円の頭金が必要になります。

結構な金額ですよね。

私が銀行員時代、頭金なしでの住宅ローン申し込みを随分受けました。

頭金を準備できないというお客様も少なくないんです。

失礼な話ですが、私たちはそのようなお客様を「マルガリータ」と呼んでいました。

部下に「さっきの住宅ローンのお客さんどうだった?」と訊ねると、

部下は「困ったことにマルガリータなんですよ」と答えるっていう感じです。

年収などが高く、個人信用情報に問題がなければ審査に通るケースもありましたが、やはり頭金のないお客さんは住宅ローンの審査に落ちるケースが多かったですね。

家を購入するのに頭金すら用意できない人は審査から「お金を貯められない人」、「計画性がない人」と思われてしまうんです。

そのような印象を抱かれてしまうと、「この人は本当に返済できるのか?」と勘ぐられてしまい、本来だったらスルーされるはずの部分まで疑われて調べられてしまうんです。

ですから、住宅購入資金の2割の頭金は無理であっても、できる範囲で頭金を用意するようにしましょう。

住宅購入資金の1割でも構いません。

それも無理なら100万円でも50万円でも構いません。

頭金だけは少額でも準備するようにして下さい。

住宅購入資金の2割でなくても、頭金があるのとないのでは審査の印象が大きく変わります。

 

返済負担率を25%までに抑える

住宅ローンの返済能力を審査する最大のポイントが「返済負担率」です。

返済負担率とは年収に占める年間返済額の割合のことを言います。

年収は税込だったり、手取だったりと金融機関によって基準が異なりますが、ここでは税込の年収で考えていきます。

返済負担率 = 住宅ローンの年間返済額 ÷ 年収(税込) × 100

もし住宅ローン以外のローン(自動車ローンなど)があれば、その返済額も含めて計算します。

住宅ローンの年間返済額が100万円で、年収が400万円なら、

100万円 ÷ 400万円 × 100 =25%

返済負担率は25%ということになります。

金融機関はこの返済負担率に基づいて住宅ローンで貸せる額を計算するんです。

一般的に金融機関では、借りる人の年収により返済負担率を25〜40%程度としています。

年収が高ければ、住宅ローンの返済に回せる額も多いので返済負担率は高めで計算されるんです。

返済負担率が高いと住宅ローンの審査は通りにくくなりますし、低いと審査に通りやすくなります。

返済負担率が25%以下でしたら、審査上まず問題ありません。

もちろん、返済負担率がこれより高くても住宅ローンの審査には通ります。

しかし、返済負担率が30%を超えると実際の返済もきつくなりますし、審査も厳しくなってきます。

返済負担率は年収、住宅ローンの借入金額、返済期間、金利によって決定します。

返済負担率のシミュレーションを「年収別住宅ローン借入額の目安」のページに記載していますので参考にしてください。

 

ここまで準備すれば鬼に金棒です。

これで住宅ローンの審査に通らないわけがありません。

住宅ローンは銀行にとって個人向けの融資ですが、土地・建物を担保に取っているわけですし、信用保証会社の保証、もしものための団体信用生命保険(団信)まで付けたガチガチの融資であり、その審査基準は高くないんです。

きちんと返済できる収入があり、延滞しない信用力があり、健康であれば基本的には問題ないんです。

あまり恐れることはありません。

審査に不安要因があれば、その要因を改善すれば審査は通ります。

唯一自分ではどうしようもできないのが健康状態なんです。

住宅ローンに必要な団体信用生命保険(団信)に加入ができず、住宅ローンの審査に通らないケースは少なくありません。

次のページではその「団体信用生命保険(団信)」について説明します。

 

なお、住宅ローン審査の詳細については「住宅ローンの審査がわかる.com」というサイトを公開していますので、こちらもよかったらのぞいて見て下さい。

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