住宅ローン審査に通りやすい銀行はあるか?

住宅ローンの審査に通る自信のある人ならいざ知らず、審査に多少不安のある人なら審査の甘い金融機関があればそこに申し込みたいというのが人情ってものです。

住宅ローンの審査基準は、各金融機関によって異なります。

では、「住宅ローンの審査に通りやすい銀行」ってあるんでしょうか?

これにはいろんな意見があると思いますが、私の見解は「住宅ローンの審査に通りやすい銀行」は程度の差こそありますが間違いなく存在します。

「住宅ローン金利の考え方」のページで説明しましたが、住宅ローンを1つの商品と考えると、その値段を決めるものは金利です。

金利が低い住宅ローンは値段の安いお得な商品であり、金利が高い住宅ローンは値段の高いお得ではない商品なんです。

銀行が住宅ローンを貸し出す際は、返済確実なリスクの低い人に低い金利で貸し出し、リスクがある人には高い金利で貸し出します。

金利はリスクに応じた対価と言えるんです。

つまり、ある程度のリスクを許容して住宅ローンを貸し出す銀行は審査に通りやすい銀行になります。

そのかわり住宅ローン金利は高めになります。

では、具体的に見ていきましょう。

 

 

銀行の形態による住宅ローン審査ランキング

銀行と一口に言っても、都市銀行から信用金庫、信用組合まで金融機関の形態は様々です。

この形態によって住宅ローン審査の通りやすさが違います。

住宅ローン審査に厳しい、すなわち通りにくい順に説明していきます。

このランキングは私の独断と偏見によるものですので、その点はご理解ください。

 

ネット銀行

住宅ローン審査にもっとも厳しいのはネット銀行です。

ネット銀行は通常の銀行と違い、基本的に支店のような店舗を持ちません。

ですから、住宅ローンの申し込みや、やり取りはネット上、または電話で行います。

通常の銀行ですと窓口で対面の申し込みになり、申込人に特殊な事情がある場合は聞き取りできますし、ある意味「この人は誠実そうだ」といった人柄までわかったりします。

しかし、ネット銀行の場合はそうもいきません。

申し込みはネットであり、必要書類は通常郵送でやり取りし、連絡はメールや電話という形になります。

ですから、住宅ローンの審査は型にはまったものとなってしまい、融通は利きにくいと思います。

しかし、ネット銀行は店舗を持たない強みから人件費や店舗費といった経営コストが圧倒的に安く、その分住宅ローン金利もずば抜けて低いのが特徴です。

住宅ローンの審査に通る自信のある人であれば、ネット銀行はお勧めです。

 

都市銀行、信託銀行

ネット銀行の次に住宅ローンの審査に通りにくいのは都市銀行、信託銀行です。

都市銀行や信託銀行はいわゆる大手の銀行です。

都市銀行は「メガバンク」なんていう呼び方をしますよね。

都市銀行、信託銀行は首都圏や大都市に店舗を構え、その他の県では県庁所在地に1店舗を構えていることが多いです。(県によっては都市銀行や信託銀行のないところもあります)

つまり、田舎にはないんです。

住宅ローンは土地、建物を担保に取ります。

田舎になればなるほど土地の価値が下がります。

ですから、都市銀行、信託銀行は担保価値の低い住宅ローンにはなかなか応じてくれません。

購入する物件が大都市ならいざ知らず、地方ではなかなか敷居が高いと言わざるを得ません。

住宅ローン金利はネット銀行に次いで低いケースが多いですね。

 

地方銀行

一般の方にはなじみが薄いんですが地方銀行は第一地方銀行と第二地方銀行があります。

一般にその地域で最も大きな地方銀行が第一地方銀行のケースが多いです。

では第一地方銀行と第二地方銀行のそれぞれについて見てみましょう、

第一地方銀行

各都道府県に本拠地を置き、地元を中心に営業している銀行です。

第一地方銀行の大多数が、その本店所在府県で最大規模の金融機関です。

現在64の銀行があり、各都道府県に1つか2つの第一地方銀行があります。(特殊な県としては福岡県は4つ、静岡県は3つの第一地方銀行があります)

七十七、八十二、十八などの数字の名前の銀行は第一地方銀行です。

住宅ローンに限らず、一般の企業向け貸出も次に説明する第二地方銀行よりもハードルが高いです。

第一地方銀行は地域の殿様的な感覚が強く、審査もちょっと厳しい傾向にあります。

第二地方銀行

第一地方銀行同様、各都道府県に本拠地を置き、地元を中心に営業している銀行です。

第二地方銀行のほとんどが以前は相互銀行と呼ばれていた銀行です。

現在41の銀行があり、県によっては第二地方銀行のない県もあります。

ちなみに青森県、秋田県、茨城県、埼玉県、山梨県、石川県、岐阜県、滋賀県、京都府、奈良県、和歌山県、鳥取県には第二地方銀行がありません。

第二地方銀行は地域で2番手に銀行が多く、住宅ローンに限らず、一般の企業向け貸出も第一地方銀行に比べればハードルは低めです。

 

JAバンク、労働金庫(ろうきん)

JAバンクや労働金庫(ろうきん)、農家や勤労者のための金融機関だと思われがちですが、結構普通の人が利用できることも多いんです。

実際、私の義弟も会社員ですが、住宅ローンはJAバンクを利用しています。

JAバンクや労働金庫は、都市銀行や地方銀行に比べて住宅ローンの審査は緩やかなように感じます。

JAバンク

JAバンクはJAの正組合員(農家)とその家族を主な顧客層としていますが、農家以外の人も取引が可能です。

農家以外の人であれば、所定の出資金を払い込めば准組合員として取引ができるんです。

出資金は各地域のJAによって異なりますが、一口1,000円からのところが多いようです。

もちろん、JAの准組合員から脱退するときは、出資金は返還されます。

つまり、JAバンクは誰でも利用可能なんです。

義弟が住宅ローンを申し込む際、当時銀行員であった私がJAバンクの担当者と話をする機会がありましたが、審査は結構緩い感じでした。

JAバンクはJAすなわち農協が主体となった金融機関であることから、全国津々浦々、結構田舎にもあったりします。

店舗数は全国で8,000以上もあり、結構使い勝手の良い金融機関なんです。

労働金庫(ろうきん)

ろうきん(労金・中央労働金庫〉は、労働組合や生協などの勤労者がお互いを助け合うために資金を出し合ってつくった、営利を目的としない協同組織の金融機関です。

勤労者のための金融機関ということで、以前は自営業者は利用できなかったようですが、現在は原則3年以上同一事業を行っている自営業者であれば利用ができます。

ろうきんは本来、労働組合や生協などの勤労者のための金融機関ですから、それ以外の方は個人会員として加入(最低出資金1,000円)すれば利用できます。

この点はJAバンクと同様です。

ろうきんの最大の特徴は、審査申し込みに必要な年収が住宅ローンを扱う金融機関で最低水準とも言える150万円ということです。

かなりハードルが低いですよね。

店舗網はJAバンクに比べれば少ないですが、全国に640店舗あり、比較的利用しやすいと思います。

 

信用金庫、信用組合

信用金庫と信用組合は似たような名前で、混同しがちですが、根拠法や会員(組合員)資格が異なることから区分されているんです。

信用金庫の方が営業エリアも広めで、信用組合よりも規模が大きめです。

どちらも地域に根差した、中小企業や個人のための金融機関であると理解してください。

信用金庫や信用組合は大企業相手の金融機関ではありません。

地域の中小企業や個人を取引対象としているため、金融機関の中でも規模は小さいです。

住宅ローンの審査基準は金融機関の中でもかなり緩めです。

しかし、審査基準が緩いがゆえ、住宅ローンの金利は高めに設定されているケースが多いです。

これは中小企業向け貸出も同様で、金利は高めです。

リスクと金利はトレードオフ(両立し得ない関係性)と言いますが、「審査に通りやすい≒リスク許容度が高い≒金利が高い」の関係性でこうなってしまうんですね。

金融機関の中では信用金庫と信用組合が最も住宅ローンの審査に通りやすいと思います。

 

番外編 スルガ銀行は住宅ローンの審査に通りやすい?

静岡県の第一地方銀行でスルガ銀行という銀行があります。

静岡県は全国でも珍しく、静岡銀行、スルガ銀行、清水銀行の3つの第一地方銀行があり、静岡銀行が突出して規模が大きく、スルガ銀行は静岡で2番手の銀行です。

銀行のビジネスモデルは広く預金を集め、融資を行って収益を上げるんですが、地方銀行の場合は預金の3分の2程度が貸出に回り、残り3分の1程度は国債などの有価証券で運用されるのがほとんどです。

なぜなら、地方では融資のニーズが少なく、余ったお金は安全かつ流動性の高い(換金しやすい)有価証券で運用されるんです。

しかし、64行ある第一地方銀行の中でスルガ銀行の有価証券運用割合は突出して低いんです。

これは、安全で流動性は高いけれども金利の低い有価証券で運用するくらいなら、リスクと金利を取って住宅ローンの残高を増やそうといったスルガ銀行のスタンスによるものだと考えられます。

事実、スルガ銀行の住宅ローン残高割合は第一地方銀行の中でもダントツです。

ですから、スルガ銀行は住宅ローンの積極的な銀行であると言えます。

私の友人にプロの歌手がいます。

彼によると、ミュージシャン仲間の間ではスルガ銀行は最後の砦、駆け込み寺と言われているそうです。

ミュージシャンは基本的に自営業者です。

毎年の年収はばらつきが多く不安定で、職業がミュージシャンというだけで金融機関から敬遠されるケースも多いそうです。

ミュージシャンも家を購入する時は住宅ローンを借ります。

しかし、住宅ローンの審査になかなか通らないそうなんです。

そんな状況の中、スルガ銀行はミュージシャンにも住宅ローンを対応してくれるケースが多く、ミュージシャンの中では、スルガ銀行は最後の砦、駆け込み寺と言われているそうです。

都市伝説みたいな話だなと思いましたが、スルガ銀行のスタンスを考えれば納得のいく話です。

そこでスルガ銀行の住宅ローンを調べてみました。

謎はすぐに解けました。

スルガ銀行は、通常の住宅ローンに加え、審査条件を大幅に緩和した「スーパーホームローン」という商品を提供しているんです。

当然「スーパーホームローン」は通常の住宅ローンに比べ、金利がかなり高く設定されています。

やはり、想像した通りスルガ銀行はリスクを取る代わりに、高い金利を取って住宅ローンを貸し出していたんですね。

友人が話していた彼のミュージシャンの仲間は、高い住宅ローン金利を払ってスルガ銀行から「スーパーホームローン」という住宅ローンを借りていたんですね。

 

しかし、スルガ銀行も状況が変わったと思います。

スルガ銀行が以前住宅ローンの審査に通りやすかったのは事実だと思います。

しかし、現在は状況が変わったのではないでしょうか。

ご存知の方も多いと思いますが原因はかぼちゃの馬車とスルガ銀行の事件です。

2018年、女性向けシェアハウス“かぼちゃの馬車”の破綻後、スルガ銀行による口座残高改竄などの不正行為が発覚しました。

このほか、スルガ銀行は、実際の担保価値に見合わない物件へも融資していたと報道されています。

この事態を金融庁も重く受け止め、スルガ銀行に限らず銀行の融資体制を厳しく監督しています。

スルガ銀行も以前のようなリスクを取った融資はできなくなっており、審査に通りやすかった以前の状況から一変していると思われます。

 

これまで説明してきましたが、住宅ローンの審査に通りやすい銀行はあります。

しかし、住宅ローンの審査に通りやすい銀行ほど住宅ローンの金利が高くなってしまうんです。

世の中よく出来ていますよね。

 

なお、住宅ローン審査の詳細については「住宅ローンの審査がわかる.com」というサイトを公開していますので、こちらもよかったらのぞいて見て下さい。

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