転職したら住宅ローンはどうなる

住宅ローンを借り入れている場合、途中で転職すると住宅ローンはどうなるのでしょうかと尋ねられたことがあります。

住宅ローンの審査は、その時勤務していた会社とそこから発生する給与でパスしたわけで、会社が変わると住宅ローンを全額返済しなければならないのではないかと心配されたわけです。

結論から言いますと、延滞などなくきちんと返済されているのであれば何の心配もいりません。

住宅ローンの返済期間は30年とか35年とかの長期に亘ります。

そんな長い期間、人生何があるかもわかりません。

返済期間中に亡くなってしまう方も少なくないんです。(亡くなった場合は団体信用生命保険(団信)の保険金で住宅ローンは返済されます。 団体信用生命保険(団信)の詳細は「団体信用生命保険(団信)」のページをご参照ください)

ですから、住宅ローンの返済期間中に転職される方も大勢いらっしゃいます。

確かに、住宅ローン申し込み時はその時の勤務先、収入で審査をしますが、きちんと返済を続けてている限り、その後転職しようが、失業しようが、金融機関は何も言いません。(失業の場合は別の問題がありますが)

金融機関は貸し出した住宅ローンをきちんと返済さえしてくれればそれでいいんです。

これは、期限の利益という考え方に基づくものです。

 

期限の利益とは

期限の利益とは、期限を決めることで債権債務に係る当事者が受ける利益のことで、期限が到来するまで、債務を履行しなくてもよい債務者側の利益のことを言います。

つまり、契約書上で規定された期限が来るまでは、借入金等の債務に関する返済を行わなくてもいい債務者側の利益のことです。

この期限の利益が無かったとすると、例えば住宅購入のために3,000万円を借りたとしたら、債権者である金融機関の都合で翌月に3,000万円を一括請求されるような事態が発生してしまします。

これはあんまりですよね。

期限の利益は債務者が金銭等を借りる際、一定期間の返済期限を設けることが出来る権利で、言い換えれば分割払いの権利ということになります。

期限の利益があることで「住宅ローンで借りた3,000万円は35年後までに返済し、それまで月々15万円の返済を420回の分割で行なう。」というような住宅ローン契約を結ぶことができるんです。

この期限の利益があることで、債務者は安心して住宅ローンを組むことが出来るのです。

しかし、この期限の利益は、延滞などで喪失してしまうことがあるんです。

 

期限の利益の喪失

期限の利益の喪失に関しては民法第137条に明記してあります。

民法第137条 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。

一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。

三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。

つまり、債務者が自己破産手続きを開始したり、担保が無断で売られたり、差し出されないような場合、期限の利益を喪失してしまいます。

しかし、上記の内容だけでは債権者である金融機関がが不利になることもありますので、住宅ローン契約時に債務者と債権者の当事者同士で追加の条項を決めるるんです。

例えば「分割支払が滞ったら(延滞)、残りの金額を一括請求する」といった内容です。

住宅ローンの場合、一般的に6回の滞納が続くと期限の利益の喪失になってしまうことが多くなっています。

1~5回の滞納で督促書や催告書などが送られ、それでも返済がされない場合、いよいよ期限の利益喪失通知書が届き、期限の利益を喪失してしまいます。

そうなると、住宅ローンを一括で返済しなければならなくなります。

 

住宅ローンの延滞等がなければ転職は問題なし

期限の利益の説明が長くなってしまいましたが、住宅ローンの借り手は上述の期限の利益によって守られており、毎月の返済をきちんとしていれば何も心配することはありません。

しかし、住宅ローンを延滞していないので、借り入れ後に申告していた内容に変更あった場合の連絡は不要というわけではありません。

転職は勤務先が変更になるので借り入れしている金融機関への報告が必要となります。

住宅ローン契約の際には名前や住所をはじめ勤務先も届出事項となっていますので、契約約款にも届出事項に変更があった場合は、所定の手続きや届出をするよう明記されています。

借主が転職したなど金融機関が知るわけもありませんので、借主から届け出ることになっているわけです。

 

問題は転職で収入が減ること

転職で従来同様、または従来以上に収入が増える場合は問題ありませんが、転職で収入が減ってしまう場合もあります。

収入が減ったことにより、毎月の返済が苦しくなり、それが原因で延滞を起こし、ついには期限の利益を喪失なんてことになれば元も子もありません。

その場合は金融機関に早めに相談してください。

金融機関も鬼ではありません。

返済条件の緩和など相談に乗ってくれるはずです。

住宅ローンの返済に困った場合については「住宅ローンの返済に困ったら」のページで説明していますので、こちらをご参照ください。

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