銀行は公共的な意味合いが強い企業とはいえ、大半が株式会社であり公的な使命がある一方で企業としての利益も追求しなければなりません。
銀行はどのようにして利益を上げるかといえば、広く預金で資金を集め、その資金を企業や個人に貸し出しその金利に差で儲けるんです。
この預金と貸し出しの金利差を「利ざや」といいます。
住宅ローンは土地・建物を担保に取り、信用保証会社の保証まで付けるガチガチの貸し出しであり、融資が焦げ付くリスク(貸出金が回収できないリスク)が少なく、比較的金利が高いので「利ざや」の稼げる貸し出しなんです。
ですから銀行はたくさん住宅ローンを貸したいというのが本音です。
実際、金融機関同士の住宅ローン獲得競争は想像以上に激しいものがあるんです。
また、銀行内でも住宅ローン獲得ノルマが与えられ、銀行員は必死に住宅ローンの借り手を探しています。
しかし、そんなに貸したい住宅ローンなんですが、いざ申し込んで審査を受けると、審査に通らないケースは少なくありません。
住宅ローンとはいえ、そこはやはり融資であり銀行としては基準をクリアできない顧客には融資できないんです。
これまで住宅ローンの審査について説明してきましたが、このページでは住宅ローンの審査に通りにくいタイプについて説明します。
反対に考えればそのようなタイプでなければ、住宅ローンの審査に通りやすいということになります。
銀行員はある程度ベテランになると、住宅ローンの申し込みを受けた段階で「このお客さんはちょっと厳しいかな」といった感覚がわかるようになります。
そのような人が「住宅ローン審査に通りにくいタイプ」なんです。
では具体的に見ていきましょう。
職業
住宅ローンの審査に最も通りやすいのはズバリ公務員です。
公務員は年収が高いというわけではありません。
大企業のサラリーマンや自営業者のほうが年収が高いケースは少なくありません。
しかし、よっぽどの問題を起こさない限りクビにならない、会社のように勤務先が破たんすることがないなどの雇用形態が安定していることがポイントの高いところなんです。
次は会社員です。
会社員の場合はその会社によって違います。
会社員でも上場会社などの大企業や地場の有力企業といった勤務先が安定している会社員はポイントが高いですね。
会社員といっても誰も知らない零細企業の会社員でしたらポイントは大きく下がります。
また、会社員の場合は雇用形態でも変わります。
会社員の場合は正社員であることが前提で派遣社員やアルバイトなどの非正規社員は正直厳しい部分があります。
住宅ローンの審査に最も通りにくいのは、残念ながら自営業者です。
自営業者でもかなりの収入がある方もいらっしゃいます。
しかし、その人が病気になってしまったらどうなるでしょう。
たちまち収入が減ってしまうのではないでしょうか?
このように職業ではその人や年収を見ているのではなく、その収入の背景を見ているんです。
つまり、何かあっても困らない安定した勤務先が背景にあると審査に通りやすいんです。
職業という観点で住宅ローンの通りやすい順番は次のようになります。
公務員 > 大企業の正社員 > 中小企業の正社員 > 自営業者 > 非正規雇用の会社員
住宅ローン審査に通りにくいタイプの職業は自営業者と非正規雇用の会社員です。
年収
もちろん年収は多いにこしたことはありません。
しかし、個人信用情報で問題が発覚した場合はどんなに年収が高くても住宅ローンの審査に通りません。
よく高収入のほうがローンの審査に通りやすいのではと思っている人が多いのですが、必ずしもその通りとは限りません。
年収よりも、むしろ審査のときに見られるのは、これまで何度も説明してきた「返済負担率」なんです。
おさらいの意味で返済負担率について説明します。
これは、年収に占める年間返済額の割合のことを言います。
年収は税込だったり、手取だったりと金融機関によって基準が異なりますが、ここでは税込の年収で考えていきます。
返済負担率 = 住宅ローンの年間返済額 ÷ 年収(税込) × 100
もし住宅ローン以外のローン(自動車ローンなど)があれば、その返済額も含めて計算します。
住宅ローンの年間返済額が100万円で、年収が400万円なら、
100万円 ÷ 400万円 × 100 =25%
返済負担率は25%ということになります。
住宅ローンの年間返済金額が同じであれば、年収が高ければ返済負担率は低くなりますが、住宅ローンの年間返済金額は借入金額、返済期間、金利などの条件で変わってきます。
年収が低くても条件次第では年収の高い人よりも返済負担率が低くなることがあるんです。
年収の低い人でも、それまで頑張って貯蓄しそれなりの頭金が準備できれば、借入金額も減りますので年収の高い人よりも返済負担率が低くなったりするんです。
返済負担率の安全ラインは25%と言われています。
また、金融機関によっての基準は異なりますが、返済負担率の上限は35%~40%程度までと言われています。
大切なのは単純な年収よりも年収と返済額のバランスなんです。
ですから、単純に年収が高ければいいわけではないんです。
年収が高いにこしたことはありませんが、住宅ローン審査に通りにくいタイプの年収はありません。
住宅ローン審査に通りにくいのは返済負担率の高い人で、返済負担率が30%を超える場合は注意してください。
返済負担率が35%を超えるような住宅ローンを申し込む人こそが、住宅ローン審査に通りにくいタイプといえるでしょう。
勤続年数
勤続年数は長ければ長いほど安定しているとみなされます。
同じ職場で3年以上働き続けている状態であれば特に問題はないと思います。
転職したばかりで勤務年数が1年未満などでは審査で引っ掛かる可能性があります。
勤続年数が短い人は住宅ローン審査に通りにくいタイプといえるでしょう。
頭金
上述の年収で説明した「返済負担率」にも関係しますが頭金が用意できない人は、住宅ローン審査に通りにくいタイプとです。
頭金を用意していると住宅ローン審査の印象がグッとよくなります。
その金額は多ければ多いほどいいんですが、現実的には難しいところもあるので、今後の生活に無理のない範囲で構いません。
住宅購入の頭金は一般的に2割が妥当とされています。
ですから、住宅購入資金の2割以上の頭金が用意できれば住宅ローンの審査上、何の問題もありません。
家を購入するのに頭金すら用意できない人は審査から「お金を貯められない人」、「計画性がない人」と思われてしまうんです。
頭金は住宅購入資金の2割以上でなければいけないかといえばそうでもありません。
住宅購入資金の2割の頭金は無理であっても、できる範囲で構いません。
住宅購入資金の1割でも構いません。
それも無理なら100万円でも50万円でも構いません。
頭金なしでの住宅ローン申し込みは決して少なくありませんが、このような人は住宅ローン審査に通りにくいタイプといえるでしょう。
年齢
年齢は住宅ローン審査で結構大切なポイントです。
金融機関によって若干の違いはありますが、住宅ローンの申し込み資格として、申込時の年齢が20歳以上65歳未満、かつ完済時の年齢が80歳未満という条件が多いと思います。
加入条件が緩やかなワイド団信も加入条件が50歳以下のところが多いですね。
住宅ローンは何十年単位で継続させる契約なので、年配になればなるほど組みにくくなってしまうんです。
例えば、50歳の人が20年の住宅ローンを組もうとしても、返済が完了するのは70歳になってしまいます。
50歳ですから今は年収が高いんですが、10年後、20年後はどうでしょう?
サラリーマンの場合は年収が下がっていたり、定年退職している可能性も高いですよね。
銀行にとって重要なのは住宅ローンの返済終了まで支払い能力があるのかということですから、資産があるとか退職金が高いとか、なにかしら安心させる材料が必要になるでしょう。
住宅ローンの返済期間は30~35年が多いです。
仮に返済期間を35年とすると、完済時年齢80歳から逆算すれば申込時年齢は45歳が限界で、返済期間を30年とすると申込時年齢は50歳が限界です。
年齢が50歳以上の人は住宅ローン審査に通りにくいタイプといえるでしょう。
これまで説明したことはあくまでも「住宅ローン審査に通りにくいタイプ」で、「住宅ローン審査に通らない人」ではありません。
ただ、審査の傾向としてこのようなポイントがあることは頭に入れておいてください。
なお、住宅ローン審査の詳細については「住宅ローンの審査がわかる.com」というサイトを公開していますので、こちらもよかったらのぞいて見て下さい。