購入物件の適正予算

前章で「借入できる」住宅ローン額と「返済できる」住宅ローン額について説明しました。

そして、「返済できる」住宅ローンを組むべきであることをご理解頂けたと思います。

ということは、自分の年収や返済期間に照らし合わせて、無理なく返済できる住宅ローンの金額がわかったと思います。

これがわかれば、どの位の物件が購入できるかわかります。

ここでは、あなたの経済状況に合った、適正な購入物件の予算について考えます。

住宅物件の購入原資は以下の3つになります。

 

住宅物件の購入原資

1.自己資金

自己資金とは、自分自身ならびに配偶者で用意できるお金です。

平たく言えばあなたと配偶者の現預金のうち物件購入に使うことのできるお金のことです。(使用できる換金性の高い有価証券などもそれに含めて構いません)

これは世帯や年齢によって様々です。

若い世代はどうしても自己資金が少なくなってしまいますよね。

当座の生活費や子供の教育資金など必要な手元資金を除いて、余裕のある範囲で考えてください。

これだけ手元にあれば安心というくらいの余裕が必要です。

くれぐれも余裕を持ったところで考えて下さい。

2.親や祖父母からの援助

自分や配偶者の親、祖父母から援助してもらうお金のことです。

親や祖父母からの援助は税制上の優遇もあり、実際に利用している人は少なくありません。

税制上の優遇とは簡単に言うと自分や配偶者の父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、一定金額について贈与税が非課税となる制度です。

ご参考までに詳細な制度については次のページで説明します。

3.住宅ローン

自分の年収や返済期間に照らし合わせて算出した、「無理なく返済できる住宅ローンの金額」です。

「無理なく返済できる住宅ローンの金額」については前章「住宅ローン借入額の目安」の「年収別住宅ローン借入額の目安」をご覧ください。

 

 

物件の適正予算の計算方法

上の物件購入の原資3つがわかれば後は簡単です。

次の式に当てはめて下さい。

物件の適正予算=自己資金+親や祖父母からの援助+住宅ローン−諸費用

諸費用は物件や売買形態によっても異なりますが、不動産仲介手数料、登記費用、不動産取得税、引っ越し代、その他諸々結構かかります。

一般的に物件価格の5%~10%程度かかると言われています。

では具体的な例を見てみましょう。

若い30歳のサラリーマン夫婦で、年収500万円と仮定しましょう。

これまで貯めた住宅用の自己資金は200万円。

親から300万円の援助があるとします。

返済に無理のない住宅ローンで返済負担率25%、返済期間35年で考えてみます。

諸費用は物件価格の7%と仮定します。

自己資金 200万円
親からの援助 300万円
返済に無理のない住宅ローン 2,353万円
▲諸費用(物件価格の7%) ▲187万円
物件の適正予算 2,666万円

 

すると、物件の適正予算は2,666万円ということになります。

この適正予算を上限として物件購入を考えると安全です。

 

希望する物件に適正予算が足りない場合

「うーん、この物件の適正予算じゃ欲しい物件に足りないなー」と思っている方もいらっしゃるでしょう。

絶対この金額以内に抑えなければいけないという訳ではありません。

若い方でしたらこれから収入も増えるでしょうし、奥様が働いていらっしゃるご家族であればさらに余裕があるでしょう。

ですから、希望する物件に適正予算が少し足りない状況でしたら、ご家族の状況をよく考えて住宅ローン部分を増やすこともありです。

例えば希望する物件に適正予算が100~200万円不足する程度でしたら住宅ローン部分の増額を検討しても構わないと思います。

もちろん住宅ローンの返済はきつくなりますが、その程度でしたら許容範囲でしょう。

問題は希望する家づくりにかかる費用と予算が大きく乖離している場合です。

例えば希望する物件に適正予算がが1,000万円近く不足するようなケースではどうでしょうか?

その分を住宅ローンの増額で賄うとすると、返済負担率が35%程度に達してしまいます。

住宅金融支援機構のフラット35の返済負担率の基準も35%が上限ですし、そのほかの金融機関も対応してくれるところがあると思います。

こうなると「返済できる金額」の住宅ローンではなく「借入できる金額」の住宅ローンになってしまうんです。

くどいようですが、過大な住宅ローンの設定だけはやめてください。

はっきり言って、物件の予算は住宅ローン次第でどうにでもなります。

家族の豊かで幸せな暮らしのために住宅を取得しようとしているのに、その住宅ローンのせいで返済に苦しんだり、挙句の果てに家を手放したりしては元も子もないのですから。

大変しつこくて申し訳ありませんが、元銀行員としてこれだけは申し上げておきたいと思います。

 

住宅ローンとは直接関係ありませんが、上述の住宅物件の購入原資で説明した「親や祖父母からの援助」の税制上の特例「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例」について、ご参考までに次のページで詳細を説明します。

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